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わさび×コンテナ×IoTが面白い|NEXTAGEの栽培モジュールとは

わさび×コンテナ×IoTが面白い|NEXTAGEの栽培モジュールとは

わたしの日課に、「世の中に出てきたばかりで、まだ日の目を浴びていないけれど、今からニーズがありそうなサービスを探す」というものがあります。要は、未来のワクワク探しですね。

そんな日課の中で見つけたのが、株式会社NEXTAGE。一言でいうと、「コンテナの中で最高級わさびを育てる」会社です。わさび×物流コンテナ×IoT。この組み合わせ、私は一度も見たことがなくて、「なんぞこれ」とついつい覗いてみたら——これがめちゃめちゃ面白かった。というわけで、調べたことを表多めでぜんぶまとめます。

(先にひとつ注意ですが、中古車販売で上場している「ネクステージ」とは別会社です。今回のNEXTAGEは、nextagecorp.com のアグリテックベンチャーの方です)

1. 前提知識: 実は「本わさび」が消えつつあります

チューブわさびの緑。あれを「当たり前」だと思っていたら、ちょっと危ない感じなんです。まず現状をざっくりと。

わさびの現状数字・事実
チューブ・粉の中身チューブに本わさびの根茎はほぼ入っていない。粉は西洋わさび(ホースラディッシュ)製が多い
国内生産量2005年 4,615トン → 2021年 1,885トンで約6割減
価格市場取引価格は5年前の約2倍。最高級品は1kg2万円超で「マグロより高い」レベル
減少の原因気候変動による水温上昇・台風被害・農家の高齢化・後継者不足
産地の偏り上位3県で生産量の約85%(トマトは35%程度)。災害1発で供給が揺らぐ
海外需要和食ブームで伸長中。国内生産の一部が輸出に流れ、国内はさらに手薄に

つまり「チューブはあるから平気」の中身はぜんぶ代替品で、本物だけが静かに消えかかっている。この危機感が、NEXTAGEという会社の出発点です。

2. NEXTAGEって、ずばり何?

公式のキャッチは「わさびの未来を育てる」。冷たい清流と適温といった「わさびが本来生きる環境」をテクノロジーで再現して、「いつでも、どこでも、誰でも」わさびを育てられる総合ソリューションを作っています。

会社の基本内容
設立2018年1月(代表・中村拓也さんの個人事業を法人化)
資本金約2億円(2025年9月の増資後・同社沿革より)
事業①モバイル農業事業(栽培モジュールの製造・販売・保守・サポート) ②研究開発(IoT、培養苗・養液) ③わさび販売(EC『山葵人商店』)
拠点東京・目黒区のほか、静岡(焼津)のR&Dセンター、横浜の栽培管理センター、そして海外初拠点のアイルランド・ダブリン
実績東洋経済「すごいベンチャー100」選出(2026年10月)

きっかけが、個人的に一番好きなポイントです。中村さんは大のわさび好きで、旅先で台風などに荒れていくわさび田を実際に目にして「これはまずい」と。最初は自分たちで新規就農することも考えたそうですが、ここで一度立ち止まったんですよね。「自分たちが1農家として頑張っても、増やせるのはせいぜい10万本。数千トン単位で減っている市場では焼け石に水。栽培に関わる人を増やす仕組みづくりのほうが効果的だ」と。

この「自分で育つのをやめて、育てる人を増やす側に回る」という意思決定が、この会社の全部を決めていると思っています。動きの速さも見ものです。

年起きたこと
2018年創業
2019年植物工場でのわさび栽培事業に参入
2023年「わさび栽培モジュール」受注開始。販売代理店マクニカへ1号機を納品
2024年横浜に栽培管理センター(C&Mセンター)を開設
2025年資本金を約2億円に増資。アイルランド・ダブリンに海外初拠点「NEXTAGE Lab Inc.」
2026年東洋経済「すごいベンチャー100」に選出

3. 何がすごい? コンテナの中身

本題の「わさび栽培モジュール」です。40フィートのハイキューブコンテナ(わずか28㎡相当)が、そのまま植物工場になります。

スペック中身
栽培数約1,800株/1台。寿司店2軒の1年分に相当
生産額の目安最高級「真妻(まづま)わさび」1本2,000円換算で約360万円分/1台
栽培期間露地栽培は2年以上 → モジュールなら約12ヶ月(最終的に6ヶ月を目標に開発中)
技術土を使わない水耕栽培・LEDの波長制御・カメラ+AIによるリモート監視・温度/湿度/CO2センサー
対応品種栽培難易度が最も高い最高級品種「真妻わさび」

栽培期間の短縮は、ただの技術自慢じゃありません。ここがビジネスの生命線です。

「期間が半分」の意味具体的には
24ヶ月 → 12ヶ月同じ設備・同じ場所で2年間に2回収穫でき、売上が倍に
投資回収植物工場は「回収10〜15年で儲からない」が常識。期間短縮は回収期間を半分に直撃する

商品構成も面白くて、いきなりコンテナ1台を買わせない「階段」を用意しています。

段階商品こんな顧客向け
①POC型(実証キット)まず小さく試したい
②標準モジュール(コンテナ型)本格的に栽培したい
③ビルトイン型(建屋活用)建物とセットで導入したい
④大規模型(大型植物工場)施設単位でやりたい

4. ビジネスモデルで面白いポイント

その1: 一つの強みを、4層で売っている

NEXTAGEの売りは「デジタル化されたわさび栽培技術」そのもので、それを4つの形で回収します。機械の売り切りで終わらないんですよね。

層売りもの収益の形
ハードわさび栽培モジュール(コンテナ設備)販売(導入後も半年程度のリードタイムを含む契約)
継続保守・栽培サポート継続収益
データIoTシステム+静岡のわさび農家と共同作成したデジタル栽培マニュアル事業の「再現性」を支える中身
食材育てたわさび。EC『山葵人商店』や豊洲市場・大阪中央卸売市場の仲卸へ販売・定期出荷

その2: 大企業との共創が上手い

提携先協業内容NEXTAGEが借りている資源
マクニカ(半導体商社)出資+販売代理店。なんと自社で1号機を購入し、新横浜で栽培実験まで実施半導体・IoTノウハウと営業網
トヨタ紡織「起潮力同調栽培技術」の共同研究(2022年〜)製造・モノづくりの力
三菱ガス化学わさびの大規模工場栽培の技術開発(2025年〜)化学の知見と大規模化の力
千代田化工建設グローバル展開を想定した栽培装置のモジュール化プラント設計の力

スタートアップが「持っていない資源」を出資と共同研究で借りて伸びる。全部自前でやらない、という進め方自体が学びです。

その3: 国内の危機から、世界へ

和食ブームのヨーロッパでは、わさびが日本より高値で取引されています。2025年9月に海外初拠点をダブリン(ダブリンシティ大学のオープンイノベーションキャンパス内)に開設し、「国内で生まれた栽培レシピ」を世界に売りにいく段階へ。危機を起点にした事業が、逆に輸出産業になる可能性を秘めているのが面白いところです。

5. スモビジ会社員・副業目線で何が学べるか

ここからが、わたし自身の持ち帰りです。

教訓NEXTAGEでの実例副業での応用
①「自分が増やす」より「増える仕組み」を売る自分が農家になる道を切り上げ、道具とノウハウを売る側へ縮む市場では個人の作業量で戦わず、参入障壁を下げる道具・手順・情報を売る
②暗黙知のパッケージ化は副業の王道テーマ「匠の技」をデジタルマニュアル+センサー+AIに分解し、未経験者も再現可能に仕事スキルを「他人が再現できる形」に分解した人だけが売れる
③入口商品は階段にするPOC型の実証キット → 標準 → ビルトイン → 大規模の4段階「まず1回/まず1ヶ月」の低い入口を作ると顧客の決断が速くなる
④起点は「好き×身近な危機」でいいわさび好きの代表が、荒れていくわさび田を実際に目撃して発足「あなたが減ってほしくないものは何ですか?」がテーマ選びの軸になる

6. まとめ

  • NEXTAGEは「わさび×コンテナ×IoT」という見たことのない組み合わせで、本わさびの供給危機(生産6割減・価格2倍)をビジネスで解こうとしている
  • すごいのは技術そのものより、①匠の栽培技術をデジタル化して「誰でも再現できる」形にしたこと、②「自分が増やす」をやめて「人を増やす仕組み」を売る側に回ったこと
  • 1号機(新横浜)から「すごいベンチャー100」選出、ダブリン進出まで一気に伸びている段階。モジュールは2030年までに900台出荷という目標も
  • スモビジへの持ち帰りは3つ: 暗黙知のパッケージ化、入口商品の階段設計、「好き×身近な危機」のテーマ選び

個人的には、この先「コンテナで育てる◯◯」という形で、わさび以外の作物にも同じ発想が展開されていく気がしています(同社もわさび以外への横展開を示唆)。ワクワク探しとしては大正解の一本でした。今後も見守ります。

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