ビジネスモデル解剖

【土地を持たずに年商4000億】タイムズ24が確立した「最強のサブリース」戦略

【土地を持たずに年商4000億】タイムズ24が確立した「最強のサブリース」戦略
ども、tempaです。
tepma

街を歩けば、必ずと言っていいほど目にする黄色い看板。「タイムズ」の駐車場は、まるでコンビニのように私たちの生活動線に入り込んでいます。

20分100円、あるいは300円。

一見すると、小銭を積み上げるだけの地味な商売に見えるかもしれません。しかし、その裏側には、年間売上高4,000億円(2025年10月期連結)を叩き出し、コロナ禍の巨額赤字からわずか数年でV字回復を遂げた、極めて強靭な「収益エンジン」が搭載されています。

なぜ、彼らは土地を持っていないのに、不動産会社以上に利益を出せるのか? なぜ、カーシェア事業で独り勝ちできるのか?

今回は、駐車場業界のガリバー「タイムズ24(パーク24グループ)」をビジネス視点で徹底解剖します。彼らの戦い方は、資金力のない個人がビジネスを立ち上げる際、あるいは副業を「事業」へと進化させる際に、極めて重要なヒントを与えてくれます。

この記事をざっくり

  • オーナーから土地を借り上げる「サブリース方式」で、初期投資と撤退リスクを極限まで下げながら拡大するスピード経営の本質。
  • 駐車場を拠点にカーシェアを配置し、さらに決済(ペイ)まで握ることで、競合他社が追随できない経済圏を構築している。
  • 労働集約型からの脱却。タイムズのモデルは、副業から事業家へステップアップするための教科書そのものである。

 

「持たざる経営」が生む圧倒的スピード

タイムズ24の強さを一言で表すなら、「リスクの非対称性」をうまく利用したサブリース(転貸)モデルにあります。

一般的に不動産ビジネスといえば、土地を購入し、建物を建て、長い年月をかけて回収するイメージがあります。しかし、パーク24グループのアプローチは真逆です。彼らは土地を「所有」しません。土地オーナーから「借りる」のです。

ここに、競合他社を突き放す2つの強力なエンジンがあります。

オーナーを即決させる「ゼロリスク」の提案力

土地オーナーにとって、更地の活用は悩みの種です。建物を建てるには借金が必要、かといって放置すれば税金がかかる。そこにタイムズはこう提案します。

「初期投資はゼロ。機器も看板もすべて私たちが持ちます。運営リスクも私たちが背負います。毎月決まった賃料をお支払いします」

この提案の凄さは、オーナー側の意思決定ハードルを極限まで下げている点にあります。オーナーは「とりあえず契約期間だけ貸してみよう」と気軽に決断できます。一方、タイムズ側にとっては、土地購入という巨額のキャッシュアウトなしに、営業拠点(店舗)を無限に増やせることを意味します。

撤退の身軽さが生む「挑戦権」

自社で土地を買ってしまうと、もし収益が上がらなかった場合の撤退戦は悲惨です。しかし、賃貸契約であれば、不採算物件からの撤退(契約解除)もスムーズに行えます。

「失敗したらすぐに止血できる」という構造があるからこそ、彼らは攻撃的なエリア展開や、実験的な出店が可能になります。これは、個人がスモールビジネスを始める際にも絶対に守るべき鉄則、「固定費を変動費化する」「撤退ラインをあらかじめ決める」という考え方そのものです。

DXとネットワーク効果による「要塞化」

単に駐車場を運営するだけなら、誰でも参入できます。しかし、タイムズ24はそこに「テクノロジー」と「ネットワーク」を掛け合わせることで、参入障壁という名の高い城壁を築いています。

ロック板を捨てた「カメラ式駐車場」の衝撃

直近の決算やニュースで注目すべきは、物理的なロック板(車止めのフラップ)を廃止した「カメラ式駐車場」の導入加速です。

従来の駐車場は、地面を掘り起こし、配線し、重いロック板を設置する工事が必要でした。しかし、カメラで車両ナンバーを認識して管理するシステムに変えることで、以下のメリットが生まれます。

初期コストとメンテナンス費の激減:物理的な駆動部分が減るため、故障リスクも減ります。

駐車が苦手な人にとって、あのロック板はストレスです。それがなくなるだけで選ばれる理由になります。

データドリブンな運営:入出庫データがデジタル化され、AIによる需要予測やダイナミックプライシング(価格変動)の精度が向上します。

これは、アナログな装置産業から、データ産業への転換を意味しています。

「駐車場 × カーシェア」の無敵ループ

タイムズ24のもう一つの武器は、グループ会社が展開するカーシェア「タイムズカー」とのシナジーです。

通常のカーシェア業者は、車両を置くための駐車場を借りるコストが発生します。しかし、パーク24グループは自社の駐車場ネットワーク(空きスペース)を利用できます。つまり、場所代という固定費がグループ内では実質的に相殺されるようなものです。

さらに、ユーザー視点で見れば、「どこに行ってもタイムズがある(借りられる・返せる)」という利便性は他社を圧倒しています。

駐車場が増える → カーシェアの拠点が増える → カーシェア会員が増える

カーシェア会員が増える → タイムズ駐車場の利用率が上がる

この「鶏と卵」の問題を自社内で完結させ、相互に送客し合うエコシステムこそが、年間4,000億円を生み出すエンジンの正体です。

自社資産すら持たない「TPL」への進化

最新の戦略で特に興味深いのが、「タイムズプラットフォームサービス(TPL)」です。

これは、自社で駐車場を運営するのではなく、他社(商業施設や自治体など)が運営する駐車場に、タイムズの「看板」「機器」「システム」「集客力」だけを提供するパッケージサービスです。

これまで「借りて運営する」ビジネスだったのが、「運営ノウハウとブランドを貸して手数料をもらう」ビジネスへと進化しています。これにより、パーク24は賃料リスクすら負わずに、タイムズネットワークを拡大できるようになります。

まさに、Amazonが自社の倉庫と配送網を他社に開放(FBA)して利益を得ているのと同じ構図です。インフラを押さえた企業が、最終的にプラットフォーム化して市場を支配する。その典型例がここにもあります。

会社員がこのモデルを自身のビジネスに転用するなら?

さて、ここからが本題です。私たち個人が、資本力のあるパーク24の戦略から何を盗み、どう副業や起業に活かせるでしょうか。

いきなりコインパーキング経営を始めるのは、土地の仕入れ競争が激しいため得策ではありません。しかし、彼らの「勝ちパターン」を抽象化すると、具体的なアクションプランが見えてきます。

「空きスペース」×「自動化」のマイクロビジネス

タイムズの強みは「無人で24時間稼ぐ」ことです。これを個人レベルにダウンサイジングしましょう。

レンタルスペース運営:マンションの一室や戸建ての空き部屋を借り上げ(サブリース)、撮影スタジオや会議室として時間貸しする。スマートロックを使えば、タイムズ同様に完全無人で運営可能です。

特化型自動販売機:冷凍食品や高級ガチャなど、高単価な商材を扱う自販機を、人通りのある店舗の軒先(デッドスペース)を借りて設置する。これも「場所借り×機器設置」のタイムズモデルです。

「サブリース(又貸し)」のリスクヘッジ

タイムズが成功した要因は、オーナーに「固定賃料」を保証しつつ、自社は「撤退の自由」を確保した点です。

もしあなたが民泊やレンタルスペースをやるなら、物件オーナーとの契約時に「撤退条項」を有利にしておくこと、あるいは「売上の◯%を支払う」という変動賃料(レベニューシェア)交渉を行うことが、生存率を高める鍵になります。最初から固定費を背負いすぎないことです。

既存プラットフォームへの「寄生」から始める

タイムズがTPLで他社の駐車場をネットワークに組み込んだように、最初は巨大なプラットフォームに乗っかるのが賢明です。

駐車場シェア:自宅の駐車場が空いている時間だけ「akippa」や「特P」に登録して貸し出す。初期投資ゼロで、タイムズの競合としてニッチに稼ぐ方法です。

カーシェア・オーナー:Anyca(エニカ)などを使い、自分の車を使わない間だけ貸し出す。

重要なのは、自分が労働して稼ぐのではなく、「資産(場所・モノ・金)を働かせて稼ぐ」という思考に切り替えることです。タイムズの黄色い看板を見るたびに、「あれは自動集金マシンだ。自分なら何で自動集金マシンを作るか?」と問いかけてみてください。

黄色い看板が教える「現代ビジネスの勝ち筋」

今回、タイムズ24(パーク24グループ)のビジネスモデルを深掘りしてきましたが、彼らの正体は単なる「駐車場屋さん」ではありませんでした。その本質は、都市の隙間を価値に変える「錬金術師」であり、私たち個人が目指すべきビジネスの完成形の一つです。

改めて、彼らの強さを3つのポイントで振り返りましょう。

所有せず利用する(サブリース):巨額の借金を背負わず、身軽さを武器に拡大する。

テクノロジーで無人化する(DX):労働集約型から脱却し、24時間稼働するシステムを作る。

面で押さえて経済圏を作る(ネットワーク):駐車場、カーシェア、決済を連携させ、競合を寄せ付けない。

これらは、これからの時代に個人がスモールビジネスを立ち上げる際にも、極めて重要な羅針盤となります。

多くの人は「たかが100円の商売」と見過ごすかもしれません。しかし、小さな収益源を無数に持ち、それをシステムで管理して積み上げる「チリツモ」の構造こそが、不況にも強い最強のビジネスモデルなのです。

明日、街でタイムズの黄色い看板を見かけたら、ぜひ思い出してください。「あれはただの駐車場ではない。自動集金マシンだ」と。そして、「自分なら、手持ちの資産を使ってどうやって自動集金マシンを作るか?」と問いかけてみてください。

まずは身の回りの「もったいないスペース」や「使っていない時間」を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。そこにはきっと、あなただけのビジネスの種が落ちているはずです。

おわりっ。

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