
今の会社で働き続けることに疑問を感じ、副業や起業の道を模索している30代のあなたにとって、「退職代行」という言葉はどこか他人事ではない響きを持っているかもしれません。
特に最近、SNSやメディアで圧倒的な露出を誇っているのが「退職代行モームリ」です。「もうムリ!」という、誰しもが一度は抱いたことのある感情をそのままサービス名にしたこの事業は、単なる便利屋的な代行サービスを超え、極めて緻密に設計されたプラットフォームへと進化しています。
なぜ、彼らは後発ながら短期間で従業員70名規模まで急成長し、業界の勢力図を塗り替えることができたのか。
その裏側には、会社員が副業や個人ビジネスを立ち上げる際に喉から手が出るほど欲しい「集客、信頼、収益化」のパッケージが詰まっています。
この記事では、株式会社アルバトロスが運営するモームリのビジネスモデルを徹底解剖し、あなたのキャリアを加速させるビジネスの「種」を抽出していきます。
この記事をざっくり
- 退職代行は「呼び水」。高単価な転職紹介や提携料で利益を最大化。
- 弁護士・労組・企業の「三位一体」で、ユーザーの不安をゼロにする。
- 集まった退職理由を「B2Bコンサル」に転用し、事業の格を上げている
顧客を吸い寄せる「フロントエンド」の魔術

ビジネスを立ち上げる際、最も難しいのが「最初の一人」を連れてくることです。モームリはこの集客において、競合が真似できないほどの強気な価格設定を武器にしています。
業界の常識を壊す価格破壊の意図
モームリの料金体系は、パート・アルバイトなら12,000円、正社員でも22,000円と、大手民間サービスの中でも最安値級です。
競合A社:一律 24,000円
弁護士法人:50,000円〜
モームリ:12,000円(アルバイト)
この低価格設定は、単なる「薄利多売」ではありません。退職という人生の分岐点に立つユーザーと、最速・最安で接点を持つための「広告費」に近い感覚です。一度接点を持てば、その後の広大なライフイベント市場へのパスポートが手に入ります。会社員のあなたが副業を始める際も、まずは「利益度外視でも選ばれる入り口」をどこに作るかが勝負の分かれ目になります。
「もうムリ!」という感情をキャッチするUX
ネーミングからして秀逸なモームリは、ユーザーの心理的ハードルを下げることに特化しています。24時間365日のLINE対応、後払い制度の導入など、「今すぐ逃げたい」という切実なニーズに対して、一切の摩擦を感じさせない設計(ユーザーエクスペリエンス)を徹底しています。ビジネスの本質は「摩擦の解消」であることを、彼らのUI/UXは雄弁に物語っています。
利益を叩き出す「バックエンド」の多層構造

フロントエンドで集めた顧客を、いかに利益率の高いサービスへ流すか。ここがモームリを「最強のプラットフォーム」たらしめているポイントです。
転職支援という高単価な出口
退職代行を利用したユーザーの多くは、当然ながら「次の仕事」を探しています。モームリは自社内に「アルバトロス転職」という部門を持ち、退職手続きの直後にキャリア支援をシームレスに提案します。
人材紹介の報酬は、一般的に転職者の年収の30〜35%です。2万円の代行費用とは桁が違う利益が、ここから生まれます。退職代行を「転職エージェントの集客チャネル」として再定義した点に、彼らの戦略的勝利があります。
周辺サービスを網羅するエコシステム
退職に伴う悩みは仕事だけではありません。メンタルケア、引っ越し、社宅の退去、あるいは給付金の申請。モームリはこれらのニーズをすべて拾い上げます。
提携メンタルクリニックへの紹介
提携引っ越し業者のマッチング
法律トラブルへの弁護士紹介
これらすべての紹介ルートから、手数料(リファラル報酬)が発生する仕組みです。顧客が一度モームリの門を叩けば、生活再建に必要なすべての支出がモームリの経済圏の中で循環するようになっています。
データがB2Bビジネスを加速させる

モームリの凄みは、個人向け(B2C)だけで終わらない点です。彼らの手元には、年間数万件におよぶ「辞めたい理由」という名の宝の山が眠っています。
Z世代のインサイトを企業へ売る
「なぜ自社の若手は辞めるのか?」に頭を悩ませる企業にとって、モームリが持つリアルな退職データは最高のコンサルティング材料です。モームリはこれらのデータを分析し、企業の離職防止策を提案するB2Bコンサルティング事業を展開し始めています。
これは「火消し」をしながら「火の起こり方」を分析し、それを「防火対策」として売るようなものです。一つの事業から得られた副産物(データ)を別の顧客に売る。この「一石二鳥」のモデルは、リソースが限られた個人起業家にとっても非常に示唆に富む戦略です。
会社員のあなたが明日から転用できる3つのヒント

モームリの成功事例を「すごい会社の話」で終わらせては意味がありません。あなたが副業や独立を考える際に、今すぐ使えるエッセンスを抽出します。
1. 「ハブ」になるニッチ市場を見つける
モームリにとっての退職代行は、人生の大きな流れの「ハブ(結節点)」です。あなたも自分のスキルを活かして、何かの「入り口」になるサービスを作れないか考えてみてください。 例えば「確定申告の無料相談」を入り口にして、資産運用のコンサルを行う、あるいは「格安のWebサイト診断」から、高単価なサイト制作や運用代行に繋げる。この「動線設計」こそが、ビジネスの成否を決めます。
2. 「信頼」をレバレッジする
個人の副業で最大の壁となるのが、信頼の欠如です。モームリは「弁護士・労組・企業」の三位一体でこれを解決しました。 あなたは、誰の看板を借りられますか?
特定のプラットフォーム(Amazonやココナラなど)の評価制度を活用する。
専門家と提携し、「監修」の立場になってもらう。
圧倒的な実績数を可視化し、社会的証明を作る。 自分ひとりの力で信頼を築こうとせず、既存の権威をいかに自分のビジネスに組み込むか(レバレッジ)を意識してください。
3. 「痛みの解消」を最優先にする
モームリが解決しているのは「会社に行きたくない」「辞めると言えない」という、心に突き刺さった鋭いトゲです。
人間は「もっと良くなりたい」という欲求よりも、「今の苦痛から逃れたい」という欲求に、より多くのお金を払います。
あなたの副業アイディアは、誰かの切実な「痛み」を解決していますか?
そのトゲを抜いてあげた瞬間、顧客はあなたを深く信頼し、その後の提案にも耳を傾けてくれるようになります。
まとめ
退職代行モームリは、現在も急速に組織を拡大しており、売上規模も数億円単位まで成長しています。
一方で、非弁行為のリスクや、業界全体への法規制の議論など、乗り越えるべき壁も少なくありません。
しかし、彼らが示した「感情を起点にし、データとプラットフォームで多角化する」という手法は、これからの時代におけるスモールビジネスの勝ち筋そのものです。会社員という安定した立場にいる今こそ、彼らの戦略を自分のビジネスキャンバスに投影し、未来の独立に向けた「収益の動線」を描き始めてみてはいかがでしょうか。
「もうムリ」を「ここから始まる」に変える。その転換こそが、起業家精神の本質なのですから。
おわりっ。
