ビジネスモデル解剖

GRAVITYが700万DLを突破した「優しさ」の収益化戦略

GRAVITYが700万DLを突破した「優しさ」の収益化戦略
ども、tempaです。
tepma

スマホを開けば、誰かのキラキラした日常や、刺々しい言葉の応酬が目に入る。

そんな現代のSNS環境に、あなたも少し疲れてはいませんか。

今回、私が注目したのは、株式会社HiClubが提供する「GRAVITY(グラビティ)」です。

リリースから数年で累計700万ダウンロードを突破したこのアプリは、従来のSNSが競ってきた「フォロワー数」や「拡散力」という指標をあえて捨てることで、爆発的な支持を得ています。

「SNSの成熟」がもたらした「疲弊」という市場の隙間を、彼らはどう突き、そしてどうやってビジネスとして成立させているのか。

今回は一見、収益化とは対極にありそうな「優しさ」を軸にした、GRAVITYの驚くべきビジネスモデルを徹底的に解剖します。

デジタル世界のオアシスが、単なる避難所を超えて巨大な経済圏へと進化する過程を見ていきましょう。

この記事をざっくり

  • InstagramやXで蔓延する「映え」や「バズ」のプレッシャーからユーザーを解放し、匿名性と心理的安全性を売りにした新勢力の正体
  • 16性格診断をマッチングの核に据え、興味関心ではなく「感性の近さ」で繋がる独自のロジックを構築
  • 広告に頼りすぎず、居心地の良さを高めるサブスクリプションと、アバター・投げ銭によるデジタル経済圏の確立

 

既存SNSの「毒」を抜く。GRAVITYが定義した新市場

現代のソーシャルメディア市場は、2025年には1兆円を超える規模に達すると言われています。

しかし、その成長の裏側で、ユーザーの心には「SNS疲れ」という深刻な副作用が蓄積されてきました。

「映え」と「バズ」という呪縛からの解放

これまでの主要SNSは、自己顕示欲(他人から認められたい欲求)をガソリンにして成長してきました。

Instagramでは見栄えの良い写真が、Xでは拡散されるための過激な言葉が評価されます。

GRAVITYは、この「外向きの自己(ペルソナ)」を強化する流れに真っ向から反対し、「内向きの自己」を解放する場所を定義しました。

アイコンは自撮り写真を使えず、運営が用意したアバターのみ。

フォロワー数も他人には見えません。

この「持たないこと(レス・イズ・モア)」の設計こそが、ユーザーにとっての解毒剤となったのです。

数値を隠すことで生まれる「心理的安全」

心理的安全とは、他人の反応を気にせず、ありのままの自分をさらけ出しても攻撃されないという安心感のことです。

GRAVITY内では、拡散機能(リポスト)が意図的に排除されています。

自分の発言が知らない誰かに晒され、炎上するリスクが極めて低いのです。

この設計により、他SNSでは「価値がない」と切り捨てられるような日常の些細な独り言が、ここでは価値あるコンテンツとして流通するようになります。

科学的アプローチによる「繋がりの再構築」

GRAVITYが単なる匿名掲示板と一線を画すのは、その繋がりの作り方に科学的なロジックを持ち込んだ点にあります。

16性格診断がアルゴリズムの核

アプリを始めると、まず12問の心理テストを求められます。

これが、SNS業界で初めて本格導入された「16性格診断テスト」です。

ユーザーはこの結果に基づいて性格タイプが定義され、そのデータがマッチングアルゴリズム(最適な相手を表示する仕組み)に直接組み込まれます。

趣味が同じだから繋がるのではなく、「考え方の癖が似ている」から繋がる。

このサイコグラフィック(心理学的属性)によるマッチングこそが、初対面でも会話が弾み、トラブルが起きにくい「やさしい空間」を維持する秘訣です。

惑星と交信。コミュニティ設計の妙

アプリ内は「宇宙」をモチーフにしたデザインで統一されています。

ユーザーは「惑星」と呼ばれるコミュニティに参加し、共通の話題で盛り上がります。

以下の表は、GRAVITY内の主要なコミュニティの動向をまとめたものです。

惑星の種類特徴昨年度比トレンド
酒飲みの星オンライン飲み会や家飲みの知識共有+400%
Girls Onlyの星女性限定。特有の悩みや居心地の良さを重視+6.2%
恋愛の星出会い目的ではなく、惚気や相談が中心+5.3%
音楽の星感性を否定されない安心感の中での共有+3.6%

このように、リアルでは言いにくい、あるいは理解されにくい「ニッチな本音」を受け止める皿が、惑星という形で用意されています。

「優しさ」をどう金に変えるか。収益化のカラクリ

「優しい世界」を維持するには、サーバー代も人件費もかかります。

GRAVITYは、広告に依存しすぎない「フリーミアム(基本無料で一部有料)」モデルを高度化させています。

サブスクリプション「GRAVITY STAR」の価値

月額制の有料プラン「GRAVITY STAR」は、単なる広告非表示以上の価値を提供しています。

例えば、音声ルームでの画像送信機能や、足あと機能の拡張。

これらは、より深く濃密なコミュニケーションを楽しみたいというロイヤルユーザー(熱心なファン)にとっての「投資」として機能しています。

料金体系は以下の通りです。

  • 1ヶ月プラン:980円

  • 3ヶ月プラン:2,580円

  • 12ヶ月プラン:9,580円

特に音声通話の回数制限緩和などは、孤独を解消したいユーザーにとって非常に強力なインセンティブ(行動の動機)となっています。

アバターとギフティング。星粒(アプリ内通貨)の経済圏

もう一つの大きな収益源が、アプリ内通貨「星粒」です。

これは主に、以下の2点で使用されます。

  1. ギフティング(投げ銭):音声ルームで配信者を応援するためにアイテムを送る機能。運営側はここから手数料を得ます。

  2. アバター経済:個性が制限されているからこそ、SSR級の限定フレームや背景パーツなどの「デジタルアイテム」に価値が生まれます。

自己表現を制限することで、逆に有料アイテムによる微細な差別化への欲求を高めるという、極めて高度なビジネス設計がなされています。

徹底した「空気感」のマーケティング戦略

GRAVITYのプロモーションは、機能の凄さを語るのではなく「そこに流れる空気感」を伝えることに徹しています。

TikTokでのVibe伝達

彼らの主戦場はTikTokです。

インフルエンサーが音声ルームでワイワイ楽しんでいる様子や、性格診断の結果に一喜一憂する様子を「楽しそうな風景」として配信しています。

スペック訴求ではなく、エモーショナル(感情的)な訴求。

「ここなら自分の居場所があるかも」と思わせるVibe(雰囲気)の伝達が、Z世代を中心とした流入を加速させています。

運営リスクとこれからの課題

もちろん、バラ色の未来ばかりではありません。

運営会社HiClubの背景にある中国Baiduとの関係性によるセキュリティ懸念や、ユーザー増加に伴う「治安の悪化」は避けられない課題です。

匿名性が高いがゆえの出会い目的ユーザーの混入や、内輪ノリによる排他性の発生。

これらに対して、AIを活用した検閲や、厳格なガバナンス(統治)がどこまで機能するかが、今後の命運を分けるでしょう。

まとめ

GRAVITYの成功は、メガSNSが捨て去った「匿名性」と「優しさ」を再定義し、それを科学的な性格診断で補強した点にあります。

単なる癒やしアプリに留まらず、サブスクリプションとアイテム課金を組み合わせた強固なビジネスモデルを構築したことは、多くのスタートアップにとって大きなヒントになるはずです。

拡散を捨て、共感を取る。

この逆転の発想が、今後ますます加速する孤独社会において、最も重要な「心のインフラ」を作り上げようとしています。

おわりっ。

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