
都心の駅前やコンビニの軒先で、あの鮮やかなグリーンの機体を見かけない日はなくなりました。株式会社Luupが展開する電動マイクロモビリティ・シェアリングサービス「LUUP(ループ)」です。
30代で副業や起業を志すあなたなら、一度はこう思ったはず。「あんなにポートがあって、みんな乗っているなら、さぞ儲かっているんだろうな」と。あるいは、「自分もあんな革新的なサービスを作ってみたい」と。
しかし、その実態は、私たちが想像する以上に泥臭く、そして極めて「リスキーな戦い」の連続です。累計214億円という途方もない資金を調達しながらも、いまだに黒字化の出口が見えないという、まさに「ハイリスク・ハイリターン」を地で行くモンスター企業。
なぜ彼らは、赤字を掘り続けてまで街中にポートを増やし続けるのか? なぜ海外の先行企業が破綻する中で、Luupは日本で生き残っているのか?
この記事では、Luupのビジネスモデルを徹底的に解剖します。そこから見えてくるのは、デジタル全盛の時代にあえて「リアルの摩擦」に飛び込むことでしか得られない、強力な参入障壁の作り方です。この記事を読み終える頃、あなたの「副業・起業の物差し」は、一段階アップデートされているはずです。
この記事をざっくり
- 面倒くさい、泥臭いが結局最強になるビジネス
- 物理的な場所の確保が参入障壁がめちゃくちゃ高いことの真理
- 個人で市場の「不便」を狙う方法
街じゅうを「駅前化」する毛細血管
Luupのミッションは、街じゅうを「駅前化」するインフラをつくることです。駅から遠い、あるいは歩くには少し億劫な「ラストワンマイル」の移動を、スマートフォン一つで解錠できる電動キックボードや電動アシスト自転車で埋めていく。それが彼らの提供価値の核心です。

主要な強みと特徴:参入障壁を築く4つの柱
圧倒的なポート密度(ドミナント戦略) 渋谷区や目黒区といった都心部では、コンビニの数よりもLUUPのポート数が多いという逆転現象が起きています。この「歩けばすぐにある」という密度こそが、ユーザーに「いつでも乗れる」という安心感を与え、習慣化を促進しています。
緻密な「規制のサンドボックス」突破力 Luupの最大の強みは、実はハードウェアでもアプリでもなく、「法規制との向き合い方」にあります。創業当初から警察庁や経済産業省、各自治体と連携し、実証実験を積み重ねることで、2023年の道路交通法改正(特定小型原動機付自転車の新設)という巨大な追い風を自ら手繰り寄せました。
複合車両戦略によるターゲット拡大 電動キックボードだけでなく、電動アシスト自転車、そして2025年に発表された三輪・小型のユニバーサルカー「Unimo(ユニモ)」と、ターゲット層を広げ続けています。若者だけでなく、高齢者や身体的な制約がある層までを取り込もうとする姿勢は、単なる「若者の乗り物」を超えた社会インフラへの執念を感じさせます。
自治体・不動産オーナーとの強固なリレーション 15,500箇所を超えるポートは、地道な営業と交渉の賜物です。大手不動産デベロッパーやマンション管理組合と提携し、本来は「デッドスペース」だった場所をポート化していく。この「物理的な場所の確保」こそが、後発が簡単に真似できない最強の防波壁になっています。
テクノロジーの活用:リアルとデジタルを繋ぐIoT
Luupは単なるレンタル屋ではありません。すべての機体には自社開発のIoTデバイスが搭載されており、GPSによる位置管理、バッテリー残量のリアルタイム把握、遠隔での解錠・施錠が行われています。
特に注目すべきは、2026年2月から導入される「割引・割増係数」などのダイナミックプライシングに近い発想です。特定のポートに車両が偏るのを防ぐため、データに基づき料金を変動させ、ユーザーの自発的な移動(リバランシング)を促す。テクノロジーを駆使して、最もコストがかかる「車両の回収・再配置」の最適化を試みています。
なぜ儲かるのか
Luupの収益モデルは一見シンプルです。
しかし、この1回数百円の積み上げだけでは、機体の調達費、メンテナンス費、そして膨大なポート管理費を賄うのは容易ではありません。ここで重要なのが「ユニットエコノミクス(1台あたりの採算性)」の視点です。

Luupが狙っているのは、移動という「手段」での利益だけでなく、移動の「データ」や「場所」をプラットフォーム化することによる収益の多角化です。
なぜ勢いがあるのか:死の谷を越えるための「逆スケーラブル」戦略
Luupが赤字を恐れず突き進む理由は、先行者利益が極めて大きい市場だからです。
米国で先行したBirdが破綻し、Limeがようやく黒字化した背景には、機体の耐久性不足と、自治体との対立がありました。Luupはこれらを反面教師とし、あえて「手間のかかる」日本独自の規制対応と、地道な地権者交渉を優先しました。
ソフトウェアビジネスのような「限界費用ゼロでの爆発的拡散」は望めませんが、一度街のインフラとして組み込まれてしまえば、競合が後から参入する余地はほとんどありません。「面倒くさいことを、誰よりも早く、大量にこなす」という逆説的なスケーリングこそが、彼らの勢いの源泉です。
このビジネスを理解した上で会社員ができること
さて、ここからが本題です。私たち会社員がLuupの戦い方から学ぶべき、明日からの生存戦略は何でしょうか。
現状への活かし方:社内の「グレーゾーン」を白に変える力
多くの会社員が「会社のルールだからできない」と諦める場面で、Luupの岡井CEOのようなマインドセットを持ってみてください。
彼らは「キックボードは公道走行不可」という壁に対し、「どうすれば可能になるか」をロジックと実証データで役所にぶつけ続けました。あなたの職場でも、前例のないプロジェクトを進める際、単に反対されるのを待つのではなく、「限定的なエリア・期間でのテスト(実証実験)」を提案し、その結果を持って交渉する。この「規制を作る側に回る」思考は、社内政治を勝ち抜く最強の武器になります。
思考の落とし込み:「面倒くさい」は、あなたのボーナス
副業を考える際、多くの人が「スマホ一つで完結」「在庫を持たない」といった、スマートで手間のかからないモデルを探しがちです。しかし、そういった領域は競合も多く、すぐに価格競争に巻き込まれます。
Luupが証明したのは、「リアルな交渉」「物理的なメンテナンス」「規制対応」といった、誰もがやりたがらない「面倒くさいこと」の積み重ねこそが、最も強固な利益の源泉になるということです。
ネット上の情報だけで完結させず、現場に足を運ぶ。
自動化ツールを探す前に、泥臭い営業で顧客の真の痛みを知る。
この「アナログな摩擦」を厭わない姿勢こそが、あなたの副業を「誰にも真似できない事業」へと昇華させます。
まとめ
Luupは今、2026年という正念場に立っています。資金が枯渇する前に、真のインフラとして黒字化を達成できるのか。それとも、壮大な実験として幕を閉じるのか。
しかし、彼らが街に植え付けた「移動の自由」という価値は、もはや後戻りできません。あなたも、自分のキャリアや副業において、誰かの「不便なラストワンマイル」を埋める存在になれていないか、今一度問い直してみてください。
効率だけを求めていませんか? 綺麗なスライドを作るだけで、満足していませんか?
もし、あなたがこれから何かを始めようとしているなら、あえて「最も面倒くさそうな部分」に目を向けてみてください。そこにこそ、あなただけのブルーオーシャンが眠っています。
ワーク:あなたが今取り組んでいる仕事や副業で、一番「面倒くさい」と感じている工程は何ですか?それを仕組み化したり、味方に付けたりすることで、参入障壁に変えることはできないか、今夜5分だけ考えてみましょう。
私はあなたの挑戦を、いつでも応援しています。もし、具体的な副業のアイデアをどう形にするか悩んだら、また「Biz-memo」を訪ねてください。
次はあなたのビジネスモデルを解剖する番かもしれません。
おわりっ。
