
2026年2月3日、退職代行サービス業界に激震が走りました。 ユニークなSNS運用と「退職代行モームリ」というキャッチーな名称で、業界最大手の一角を担っていた株式会社アルバトロスの谷本慎二社長と、その妻である同社幹部が逮捕されました。
【退職代行「モームリ」社長ら逮捕】https://t.co/85ubJLBYRp
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) February 2, 2026
容疑は弁護士法違反(非弁提携)。 簡単に言えば、弁護士資格を持たない業者が、弁護士に顧客を紹介して「紹介料(キックバック)」を受け取っていたという疑いです。
X(旧Twitter)では「名前通りになった」「ネタかと思ったらガチだった」と、その皮肉な結末に嘲笑と怒りの声が溢れています。しかし、私たちビジネスパーソンがここから読み取るべきは、単なる不祥事のゴシップではありません。
なぜ、順調に見えたビジネスモデルは崩壊したのか? 急成長する「仲介・プラットフォームビジネス」に潜む法的な落とし穴とは?
この記事をざっくり
- 退職代行大手「モームリ」社長夫妻が弁護士法違反(非弁提携)で逮捕。業界No.1の転落劇を速報解説。
- 「通知代行」の限界と、裏で行われていた「違法キックバック(紹介料)」
急成長の裏側で何が起きていたのか?事件の全貌
まずは、報道されている事実関係を整理しましょう。 逮捕されたのは、株式会社アルバトロスの社長と、その妻であり事業部長を務める人物です。
彼らが運営していた「モームリ」は、2022年の開始以来、SNSを駆使したマーケティングで累計4万件以上の利用実績を誇っていました。「弁護士監修」「労働組合提携」を謳い、クリーンさを全面に押し出していたのが特徴です。
しかし、その裏側で行われていたのは、極めて古典的な「非弁提携」でした。
通常、民間企業が運営する退職代行は「退職の意思を伝える」ことしかできません。未払い残業代の請求や有給消化の交渉といった「法律事務」を行うと非弁行為になるからです。 そこでモームリは、交渉が必要な顧客を提携先の弁護士事務所へ誘導していました。ここまではよくある業務フローです。
問題は、その誘導の見返りに、弁護士側から1件あたり約1万6500円の報酬を受け取っていたことです。「ウェブ広告費」や「賛助金」という名目でカモフラージュしていましたが、実態はただの紹介料(キックバック)。これが弁護士法72条および74条で禁じられている「非弁提携」にあたります。
元従業員の証言によれば、社内では「これは違法だから絶対に口外するな」と箝口令が敷かれていたとのこと。確信犯的に「ブラックな手法」で収益を嵩上げしていた疑いが濃厚です。
なぜリスクを犯したのか?退職代行ビジネスの収益構造
ここからはビジネスモデルの視点で、なぜ彼らがこの「禁じ手」に手を出さざるを得なかったのかを分析します。
背景にあるのは、退職代行というビジネスの「薄利」と「差別化の難しさ」です。
民間業者が行う退職代行の相場は2万円〜3万円程度。 ここから広告宣伝費(CPA)、人件費、システム維持費を引くと、利益率は決して高くありません。しかも、参入障壁が低いため競合が乱立し、価格競争が激化しています。
一方で、弁護士に依頼する場合の相場は5万円〜着手金・成功報酬など高額になりがちです。 ユーザー心理としては「安く済ませたいが、会社と揉めたくない」というのが本音。
モームリはこのギャップに目をつけました。 表向きは「民間業者の安さ」で集客し、トラブル案件は弁護士に流す。そこで紹介料を得られれば、1粒で2度美味しい収益モデルが完成します。1件1万6500円のキックバックは、単価2万円台のビジネスにおいて強烈な利益インパクトを持ちます。ほぼ粗利そのものだからです。
「安価なフロント商材で集客し、高単価なバックエンド(弁護士案件)でマージンを抜く」 これはマーケティングの定石ですが、弁護士法という強力な規制がある業界では、この「マージン」自体が違法となります。
「みんなやってるだろう」「バレないだろう」という甘い認識と、利益至上主義が招いた必然の崩壊と言えるでしょう。ブラック企業から労働者を救うはずのヒーローが、皮肉にも自社の利益のために法を犯し、従業員に違法行為を強いるブラック企業化していたのです。
2026年2月3日時点での様々な意見
このニュースで一番異常なのは、逮捕されたことではありません。退職を自分から切り出さないことに、「もうだれも驚かなくなっている実態」です。
モームリの逮捕報道を見て、
正直なところ、強い驚きはありませんでした。だからといって、
「やっぱり危なかった」「違法なんだから当然だ」… https://t.co/BeL1r921Vf— 大田勇希|ハラスメントを哲学でぶっ壊す (@yuumailsan) February 3, 2026
まとめ
今回のモームリ事件は、急拡大する代行サービス業界の歪みを露呈させました。 SNSでの華やかなプロモーションや、累計件数No.1という実績も、コンプライアンスという土台が腐っていれば、砂上の楼閣に過ぎません。
これからビジネスを志す私たちは、目先の利益や「うまい仕組み」に飛びつく前に、それが社会のルールと調和しているかを冷静に見極める必要があります。 「ユーザーのため」という大義名分があっても、法を無視して良い理由にはなりません。
退職代行業界は今後、さらなる規制強化と淘汰が進むでしょう。
しかし、これは「まっとうなビジネス」をする人にとってはチャンスでもあります。リーガルチェックを徹底し、誠実なサービス設計ができれば、信頼という最大の資産を得られるからです。
今回のニュースを、単なる「悪徳業者の逮捕」で終わらせず、自分のビジネスプランを点検するきっかけにしてみてください。
おわりっ。
